WAM NET 助成事業・映画「インディペンデントリビング」
上映イベント2019年度成果報告
特定非営利活動法人 自立生活夢宙センター
2.事業背景と目的、展望
3.事業内容
4.事業成果
6.2019年度の上映イベント概要 ~開催回ごとに取り上げた地域課題と今後の課題~
8.まとめ なぜ、いま映画「インディペンデントリビング」なのか。他
9.付録 上映イベントグラフィティ
1.はじめに
私たちの自立生活運動は、この運動の熱さと切実さに比して知名度はあまりなく、障害者が地域で自立生活をしていること自体を知られていない現状にあります。
自立生活運動とは、どれだけ重度の障害があろうと、ひとりの人間として自分の生活したい地域で、自分が決定した通りの人生を生きる権利を守る運動です。
障害者は施設にいるもの、家族が介護するもの、という偏見がまだまだ多く残るなかにあって、障害当事者が自ら地域の人びとの前に出て、交流を重ねながら、偏見や差別を解消していくというあゆみが、私たちの自立生活運動の一つです。
そうした私たちの生の姿を追ったドキュメンタリー映画「インディペンデントリビング」は、製作協力から出演、上映運動までを自立生活夢宙センターが総出で行ってきました。
この映画を、ひとりでも多くの地域の方々に届けたいという熱い想いが、私たちを動かしていたと思います。
2019年度のWAM助成により、今年度の私たちのあゆみを大きくサポートしていただきました。今後も自立生活運動を一歩でも前へと進めるために、さまざまな運動を行うものと思いますが、2019年度に実現できた合計10か所での上映活動は、障害者への差別偏見をなくしていく布石として大きな足掛かりとなることでしょう。
WAM助成事業関連のみなさまをはじめ、上映会実施活動・自立生活運動の周知活動に関わってくださった多くの協力者のみなさまに、深く御礼申し上げます。
特定非営利活動法人自立生活夢宙センター代表・理事長 平下 耕三
2.事業背景と目的、展望
●事業背景
当法人は、どれほど重度の障害があろうと地域で堂々と自分らしく暮らす「自立生活」に重きを置いて、その支援活動や人権擁護活動を行っています。誰もが暮らしやすい町づくりのための提言等運動を行ったり、生きづらさを感じる多くの市民の相談窓口として基幹相談支援センターを受託し、日々支援活動を行ったりしています。障害者差別解消法施行以来4年となろうとする現在も、多くの障害者差別の事例が寄せられており、積極的に地域交流や啓発活動等の取り組みを継続しています。
私たちがこうした取り組みを続けていくなかから見えてきた課題は、
「地域で自立生活を行う障害当事者が増えてきたものの、認知度は依然として低く、差別的な場面もいまだ発生している」というものです。
ちょうど3年もの製作年月をかけて、田中悠輝監督が自立生活運動をテーマにドキュメンタリー映画を撮っていました。この映画は私たちが企画や製作、出演に全面的に協力していたものです。ある程度編集が進んだ段階でこの映画を見て、私たちの運動を理解する一助としていただければ!という思いが昨年度の春にはかなり高まってきていました。
障害者が地域で、どのように介助者等社会資源を使いながらごく当たり前に生活を行っているのか、ドキュメンタリー映画を通してあらゆる人々にご覧いただくことで啓発の契機としよう!
この思いから、WAM助成の情報へと結びつき、助成を受けるに至りました。
これは、一般市民の方々への人権啓発のみならず、自立生活に踏み切れない当事者へのエンパワメントにもつながると思われます。
バリアフリー上映イベントを全国各地で行うことで、障害当事者との人間的な交流が生まれる契機ともなり得ます。
視覚・聴覚等の情報を得にくい障害ゆえに映画を視聴しがたい方にもバリアフリーのモデル的上映イベントは、今後同等の上映会への影響力を発揮することと思います。
各地でのこうした機会を提供することは、差別と排除のないインクルーシブな社会を築いていくことにつながります。
誰もが取り残されることない、バリアフリーのイベントを行うことが、当たり前の世の中になるように、私たちは今後もこうしたイベントを企画しつづけたいと思っています。
●2019年4月に期待していた成果
① 支援対象者
主な支援対象者は、バリアフリー上映イベントに参加する一般市民、障害当事者。
またバリアフリー上映イベントを開催する地域窓口となる各自立生活センターのスタッフ等、この上映会活動に関わるすべての者です。
② 関係機関
全国自立生活センター協議会、および同団体に加盟している各地の自立生活センター(上映イベントの現地窓口となり、上映イベントを行う)です。
③ 地域社会
地域・社会にとって、重度障害者がどのような生活を行い、その背景にはどのような課題があるのかを知る機会となります。多様性のある社会へと方向性をもつ、バリアフリー上映イベントとしても、影響力を持つものと考えられます。
● 誰にとっても暮らしやすい町づくりのために
地域課題または自立生活センターの課題を映し出したイベントに、地域特有の課題、その地域特有の上映会を行います。
たとえば、介助者が不足していて、自立生活がままならない地域は、介助者の必要性を訴えたり、自立生活を理解していただくことをテーマに強く押し出したりします。
このような課題に地域をあげてとりくみ、その課題の存在を理解していただくことで、誰にとっても暮らしやすい町づくりになるものと確信しています。
● 今後の継続体制について
事業を継続するための財源・人材の確保策
当法人による全面的なバックアップ体制で、各地域で前向きで安全に、意図<自立生活運動の意義と障害当事者理解と人権啓発>を反映できるイベントを実現します。
また今後の広がりとして、小学校などの教育機関での上映イベントが開催できるのではないかと考えています。
今、インクルーシブ教育の必要性が打ち出されている時代、具体的に重度障害者がどのような生活を行っているか映画と交流プログラムのセットで開催させてもらう展開も企画・検討中です。
次年度以降のバリアフリー上映イベントを実施する際には、財源をクラウドファンディングへの参加等により捻出し、人材については、全国の自立生活センターのネットワーク間での連携により確保が可能だと思われます。
3.事業内容
● 事業内容
どんな障害があっても、誰もが自立生活運動の映画上映を楽しみ、交流イベントに参加できる機会提供と人権啓発活動、当事者へのエンパワメントを目的に、全国規模のバリアフリー上映会を展開する事業。映画内容を受けて、映画出演者(自立生活の実践者)等との交流イベントも行う。会場内には、ボランティア、映画には音声ガイド、字幕、交流イベントには、手話通訳、要約筆記等情報保障を完備し、誰もが参加できる上映イベントのモデル事業である。2019年10月頃から全国6か所以上での上映を予定。世界での上映も試みる。映画はぶんぶんフィルムズにて2019年3月頃完成予定。
(2019年1月 2019年度の企画段階の思い)
上記の、助成事業企画当初から、趣旨はまったく変わらず、
国内外で上映イベントを実行することできました。
4.事業成果
2019年3月 ドキュメンタリー映画「インディペンデントリビング」完成
2019年4月~ 各地の自立生活センターでのバリアフリー上映イベント開催活動を本格的に
企画しはじめる。
2019年7月6日 大阪市住之江区にて自立生活夢宙センター内でのバリアフリー上映イベントを
行う。(国内1か所目)
2019年7月25日 アメリカの自立生活センター協議会(NCIL)総会にて、バリアフリー上映イベントを
行う。(海外1か所目)
2019年9月7日 東大阪市の自立支援センターぱあとなぁが現地窓口となり、バリアフリー上映
イベントを行う。(国内2か所目)
2019年10月5日 ベルギーの自立生活センター協議会(ENIL)総会にてバリアフリー上映イベントを
行う。(海外2か所目)
2019年11月9日 泉大津市自立生活センターリアライズが現地窓口となり、バリアフリー上映イベント
を行う。(国内3か所目)
2019年12月20日 大阪市天王寺区の自立生活センター・ムーブメントが現地窓口となり、
バリアフリー上映イベントを行う。(国内5か所目)
2019年1月18日 静岡県浜松市の自立生活センター・こねくとが現地窓口となり、バリアフリー上映
イベントを行う。(国内6か所目)
2020年2月12日 大阪市阿倍野区にて自立生活夢宙センターのバリアフリー&インクルーシブ上映
イベントを行う。(国内7か所目)
2020年2月15日 茨城県つくば市の自立生活センター・ほにゃらが現地窓口となり、バリアフリー上映
イベントを行う。(国内8か所目)
2020年3月7日 大阪市住之江区にて自立生活夢宙センターが報告会を兼ねて、上映イベントを行う
予定で企画を進めていたが、新型コロナウイルス感染予防の観点から中止とした。
2020年3月20日 愛媛県松山市の自立生活センター・星空のバリアフリー上映イベントを行う予定で
企画を進めていたが、新型コロナウイルス感染予防の観点から中止とした。
国内上映イベントの実施 合計 8か所
海外上映イベントの実施 合計 2か所
新型コロナウイルス感染予防対策により中止とした上映イベント 合計 2か所
● 参加者等集計
全10か所の上映イベントでの一般参加者数、有給スタッフ数、無償ボランティア数
合計 参加者 1464人 スタッフ 137人 ボランティア 36人
5.2019年度助成事業における想定外の出来事と対応
1 映画のタイトルが上映イベント企画中に変更。
対応 → 映画製作会社ぶんぶんフィルムズの決定(「アウトオブフレーム」から「インディペンデントリビング」へのタイトル変更)を受け入れて、広報活動を行っていきました。当日、上映イベントの際に混乱が生じないように、案内と対応をするためのスタッフを増やして配置しました。
2 2020年2月後半から、新型コロナウイルス感染予防の観点から、不特定多数が一堂に会するようなイベントの自粛が促され始める。
対応 → 年度末までに1か所でも多くの上映イベントの実施と、自立生活運動の周知活動を最後まで続けていきたい気持ちも強く、3月後半であっても自立生活夢宙センターでのイベントや愛媛県松山市でのイベントも行っていこうと本格的に企画を進めていました。しかし、連日の感染者増の報道を受け、安全面を重視し、やむなく中止としました。
6.2019年度の上映イベント概要 ~開催回ごとに取り上げた地域課題と今後の課題~
この上映イベントは、各・自立生活センター内での課題や、その地域固有の課題を解決する糸口になるように一歩を踏み出すアクションを取ることも当初からの計画でした。このアクションを、それぞれの実行団体が懸命に考えてイベントを実施することになりました。それぞれがどのような課題を持って向き合っていたのかをお伝えしたいと思います。
1
2019年7月6日 大阪市住之江区にて自立生活夢宙センター内でのバリアフリー上映イベントを行う。(国内1か所目)
場所:自立生活夢宙センター
プログラム概要:午前午後の上映2回、映画出演当事者と介助者のトークショー、自立生活当事者の写真展、冊子を配布して介助者不足の現状を障害当事者から説明
バリアフリーに関する合理的配慮:手話、要約筆記、音声解説、字幕、テキスト資料、会場バリアフリー、託児コーナー、盲ろう者支援
取り上げた課題:慢性的な介助者不足。とりわけ女性介助者の不足。
方法:障害当事者自らが介助者の必要性を訴え、理解と協力を呼び掛けた。また女性が介助の世界に足を踏み入れやすくするイベントの告知を行った。介助者募集冊子を製作し、配布も上映イベントの際に行った。結果的に、介助者を志願してくださる方もいた。地域の老人会の方や、小学校校長、前区長など、多くの地域の方々にお越しいただいた。
今後の課題:上映イベントの実施を続けながら、広く一般の方々へ自立生活運動の理解を促し、介助者不足の問題は、絶えず投げかけ続けていく。
報道:このときの模様は2020年1月25日のYahoo!ニュースにも取り上げられた。
2
2019年7月25日 アメリカの自立生活センター協議会(NCIL)総会にて、バリアフリー上映イベントを行う。(海外1か所目)
場所:アメリカ
プログラム概要:上映1回、参加者との質疑応答・交流、トークショー
バリアフリーに関する合理的配慮:手話、要約筆記、字幕、テキスト資料、会場バリアフリー
取り上げた課題:日本の自立生活運動、介助現場のリアルな場面を映画(英語字幕付き)を通して見ていただく。日米ともに、自立生活の価値を確認する。
方法:映画の上映と、トークショー・質疑応答・交流イベントの実施。
今後の課題:2020年度は、ADA法ができて30周年となる節目の年なので、さらに日米の交流と情報交換によって、世界に自立生活運動の進展を図りたい。
3
2019年9月7日 東大阪市の自立支援センターぱあとなぁが現地窓口となり、バリアフリー上映イベントを行う。(国内2か所目)
場所:東大阪市文化創造館
プログラム概要:午前午後の上映2回、当事者メンバーのライブ、トークショー
バリアフリーに関する合理的配慮:手話、要約筆記、字幕、音声解説、テキスト資料、会場バリアフリー
取り上げた課題:知的障害者の多いセンターが窓口になっていたので、障害当事者と出会ってほしいというニーズがあった。
方法:多くの障害当事者がイベントを運営し、映画やトークイベントの合間に自ら音楽を演奏していた。また、多くの一般の方々が来られるように地元のケーブルテレビに代表の地村氏が出演して上映イベントの告知をした。
今後の課題:知的障害当事者と一般の方々が交流をさらにもてるようにしながら、日々の活動をおこなっていきたい。
4
2019年10月5日 ベルギーの自立生活センター協議会(ENIL)総会にてバリアフリー上映イベントを行う。(海外2か所目)
場所:ベルギー・ブリュッセル
プログラム概要:上映1回、トークショー、障害当事者との質疑応答
バリアフリーに関する合理的配慮:手話、要約筆記、字幕、テキスト資料、会場バリアフリー
取り上げた課題:日本の介助現場のリアルな場面を映画(英語字幕付き)を通して見ていただく。日欧ともに、自立生活の価値を確認する。
方法:映画の上映と、トークショー・質疑応答・交流のイベント実施。
今後の課題:地理的に遠いヨーロッパの国々にも、日本の自立生活運動の高まりや取り組みが理解され、評価を受けた。今後も、このような周知の機会に、日本の取り組みを知っていただき、自立生活運動に関する世界的な連帯を行えるようになっていきたい。
5
2019年11月9日 泉大津市自立生活センターリアライズが現地窓口となり、バリアフリー上映イベントを行う。(国内3か所目)
場所:テクスピア大阪
プログラム概要:午前午後の上映2回、トークショー
バリアフリーに関する合理的配慮:要約筆記、字幕、音声解説、テキスト資料、会場バリアフリー
取り上げた課題:大阪の南部は、福祉的にも厳しい地域だと言われる。そこでの自立生活センターは、自立生活が立ち行かなくなるほどの介助者不足が起こることがあり、それを解消したい。
方法:上映イベントに地域の方々をできるだけ呼び込む。
今後の課題:介助者不足を継続的に発信していく。障害当事者による地域活動をよりアクティブにしていく。
7
2019年12月20日 大阪市天王寺区の自立生活センター・ムーブメントが現地窓口となり、バリアフリー上映イベントを行う。(国内5か所目)
場所:天王寺区役所 大講堂
プログラム概要:上映1回、トークショー、リーフレットとチラシを配布してニーズを発信
バリアフリーに関する合理的配慮:手話、要約筆記、字幕、音声解説、テキスト資料、会場バリアフリー
取り上げた課題:平日の区役所で行った上映イベントで、現地窓口となったセンター・ムーブメントの取り組みや自立生活運動のことを参加者のみなさまに知っていただきたい。
方法:冊子を製作、印刷し、参加者に配布して、障害当事者自らが説明を行い、理解と協力を呼び掛けた。この映画の主演者であり、ムーブメントの代表渕上賢治氏が田中監督とトークショーを行った。ちなみにムーブメントには、この映画の楽曲提供者であり、介助者のかわさき氏も所属している。
今後の課題:継続的にこのようなセンターの取り組み周知の活動を行っていき、支援者を増やしていきたい。
8
2019年1月18日 静岡県浜松市の自立生活センター・こねくとが現地窓口となり、バリアフリー上映イベントを行う。(国内6か所目)
場所:浜松市福祉交流センター
プログラム概要:上映1回、トークショー
バリアフリーに関する合理的配慮:手話、要約筆記、字幕、音声解説、テキスト資料、会場バリアフリー
取り上げた課題:自立生活運動を理解してもらい、介助者不足の現状を知っていただきたい。
方法:映画の上映と、障害当事者によるトークイベントの実施。
今後の課題:このような活動を重ねながら、地域の方々に自立生活運動の理解を深めていきたい。
9
2020年2月12日 大阪市阿倍野区にて自立生活夢宙センターのバリアフリー&インクルーシブ上映イベントを行う。(国内7か所目)
場所:阿倍野市民学習センター
プログラム概要:上映1回、基調講演、グループワーク
バリアフリーに関する合理的配慮:手話、要約筆記、字幕、音声解説、テキスト資料、会場バリアフリー
取り上げた課題:昨今、インクルーシブ教育が大きく取り上げられている。これは自立生活運動を支える基礎になる部分という考え方ともなっている。それゆえに、自立生活運動を知ってもらう機会に、誰もがともに学ぶ教育の価値をも発信したい。
方法:インクルーシブ教育について語れるDPI日本副議長の尾上浩二氏やDPI事務局の崔栄繁(さい・たかのり)氏をトークイベントに招いた。なるべく車いすユーザーなどの当事者に積極的にイベント告知を行い、学校教育時代を振り返ってのグループワークに参加していただいた。
今後の課題:障害当事者が中心となって、子どものときから「分けられない教育」の保障を目指して、日々の交流活動を継続していかなければならないと思う。また、こうしたインクルーシブ教育の活動もまた自立生活運動の一環であると考えている。
10
2020年2月15日 茨城県つくば市の自立生活センターほにゃらが現地窓口となり、バリアフリー上映イベントを行う。(国内8か所目)
場所:つくば市役所 多目的ホール
プログラム概要:インクルーシブ読書感想文コンクール表彰式、上映1回、トークショー
バリアフリーに関する合理的配慮:字幕、音声解説、会場バリアフリー
取り上げた課題:自立生活運動への理解と、インクルーシブ教育の価値の発信。
方法:インクルーシブ読書感想文コンクールの表彰式も同時に行い、子どもたちが、障害当事者との交流についてスピーチしたり、障害当事者のスタッフやゲストが上映イベント参加者の方々に向けて意見を述べる場を設けた。
また、トークショーでは、自立生活センター・ほにゃらの斎藤氏、上映映画の田中監督と、渡辺一史氏(障害者問題関連のジャーナリスト)により行われた。
今後の課題:自立生活運動とインクルーシブ教育は、時流としても障害者運動の大きな要であり、不可分の考え方である。このような子どもから大人までもを視野に含めたイベントの実施を行い続けたい。
7.アンケートから聞こえてきた「参加者の声」
国内上映イベント実施8か所で一般参加者の合計714名中 314枚のアンケート結果を受け取りました。44%の回答率となっています。
1.上映イベントの満足度
とても満足 158名 66%
満足 79名 33%
やや不満足 2名 1%未満
不満足 0名
回答者合計 239名
■「とても満足、および満足」した方々の声
日ごろあまり聞くことができない障害者の本音を聞くことができて、貴重な時間になりました。10代
とても面白く観れました。難しいものと思ってましたが、よく入ってきて観やすかったです。
準備に大変時間をかけておられ、皆さんが楽しめるように工夫されておられて感謝しています。60代
自立している障害者を取り上げることで、社会を変える一助となっていると思う。50代
障害があっても自己決定してサービスを利用しておられることがわかった。70代
日常生活を過ごすことの大切さを感じ、居場所・社会で生きる大切さを感じた。50代
自立生活運動がわかりやすく描かれていた。当事者がどのように生活しているかわかった。20代
いろんな課題があっても前向きな皆さんに勇気をもらえた。
自分が普段関わっている人たちとは違う種類の障害がある人の生活、課題、思いを知ることができた。20代
IL(自立生活)の意味の大きさを知った。日本を根底から変える可能性を感じた。60代
当事者個々人が自立生活をするために、それぞれ違うものがあることが提示されていた。50代
出演した人のことがリアルに分かるのが良かった。その中で、自立のこともわかりやすかった。30代
重度障害者の自立の根本を改めて思い出した。40代
いろんな障害者や介助者が出てきて、それぞれの人の気持ちやどう思って活動をしているのかが伝わってきた。20代
心地よく見れた。障害者支援に携わるスタッフですが、当事者とかかわる視点からと自分自身の人生について重ね合わせる事のできる面からと両方の面でみることができ、色々考える事が出来た映画でした。
あまり関わることがない障がい分野でしたが、少し身近に感じられる内容でした。20代
障がいを持っていても、ヘルパーさんと一緒に色々なコミュニケーションをはかって生活されていて、深い映画だなと思いました。
登場人物1人1人のドラマの展開が上手で各々の背景・思いがすごく伝わって来た。30代
平下さんのトークから情熱・革命を感じた。また、質問者からの対応の話もとても興味深いものを感じた。50代
自立するまで、そして、してからの日常生活がリアルに描かれていてとても良かった。20代
トリスの「俳優になりたい」といる希望を、映画の中の映画で見事に実現し、その上映会でのトリスの極上の笑顔がとても印象的でした。50代
障害をもつ当事者がヘルパーを使って地域で楽しみ、葛藤しながら生活していける実態がわかった。50代
障害をもちながらも自立を目指す皆様のありのままの姿を見れておもしろかったです。20代
障害者の自立までがわかりやすく、その周りの支援員や家族の悩み、葛藤を描いていて良かった。20代
午後のグループワークは、時間が足りないくらい充実していた。70代
他の自立生活センターの様子が見られてとても興味深かった。大阪のCILがエネルギッシュで驚かされた。 50代
映画もそうですが、ゲストの渡辺さんのお話も良かった。
自分が持っていなかった視点を持つことができた。 10代
人の繋がりや活動について知ることができた。
■「やや不満足」だった方々の声
内容や行ってることが専門的で知らない人が興味を持つのがむずかしそう。
俳優でやってほしい。40代
少し内輪だけで盛り上がっている気もした。60代
2. 映画やイベントに参加する前から「自立生活運動」を知っていましたか。
・以前からよく知っている 137名 48%
・少し知っていた 92名 32%
・ほとんど知らなかった 35名 12%
・全く知らなかった 23名 8%
回答者合計 287名
3.日ごろ、障害をお持ちの方々にあまり接することのない方にお聞きします。
映画やイベントを通して障害者に対するイメージが変わりましたか。
変わった 61名 50%
少し変わった 45名 37%
それほど変わらない 12名 10%
まったく変わらない 4名 3%
回答者合計 122名
■「変わった・少し変わった」方々の声
・私自身、障害をお持ちの方やヘルパーの方に対して、無理解や勉強不足を痛感しました。60代
障害を持つ人のもっと自由な生活が行動につながる。世の中になるよう願うと共に、なにかできる事を見つけたいと思いました。50代
今以上にもっと対等に接していこうと思った。40代
「ヘルパーを使う」というあり方は全く知らなかったので知れて良かった。「自立」ってそういう意味なんだということを知れた。20代
思っていたよりもみんな楽しそうにしていた。10代
自立生活には身体障害だけではなく、コミュニケーションの問題もあるんだとわかった。50代
僕らと何も変わらない。みんな夢があるし、恋をするし、何も変わらないなぁと。それを周りがどう手助けするか、協力するか、そこは難しいところかなぁと思いました。40代
重度の障害をもった人で一人暮らしをしているのは、初めて見ました。50代
私たちと同じ感覚をもって、当たり前の生活をしているということがよく分かった。20代
まさしく目から鱗だった。30代
固定概念をくつがえされました。20代
■「それほど変わらない・まったく変わらない」方々の声
障がいがある方もない方も皆、一人一人が一生懸命生きていることに変わりないから。50代
私も障害者だから。30代
これが当たり前の生活だということでは、あまり驚くことではないと思う。30代
私はだれもが平等だと思っているので、障害をお持ちの方々のことを特別にも思っていません。40代
4.この映画やイベントによって、今後、さらに暮らしやすい街になると期待できますか。
・できる 178名 62%
・少しできる 97名 34%
・あまりできない 14名 4%
・できない 2名 1%未満
回答者合計 289名
■「できる・少しできる」と思われた方々の声
一人でも多くの人に知っていただいて、みなさんが暮らしやすいまちになればと思います。40代
お互いの事をわかりあえるきっかけとなると思うので、相手の事を思いやれる気持ちがふえると暮らしやすい街になると思うし、そうなってほしい。
実際の自立生活の様子を多くの人(障害者で施設にいる人も、健常者にも)に知ってもらえる良い映画だと思いました。30代
時代を変えていく人たちが、映画やイベントだけでなく暮らしの中で居ることで変えていっていると思います。50代
インクルーシブな世の中、人それぞれ違って当たり前、隣人を特別視するのではなく普通な存在として垣根をなくしていく方向に進んでいくと思う。50代
■「ほとんどできない・できない」と思われた方々の声
社会の状況、雰囲気、そして政治が悪すぎる。だからこそ声をあげ続けよう。70代
どうなるかはわかりません。30代
一般の方々に見ていただけるチャンスが少ない。40代
5.自由回答での上映イベントの感想
普段関わりある仕事をしているけど、映画を観て知ること、感じることたくさんありました。だから、地域の人、学生の人、いろんな人が観ることで世界観やなんとなく見かける障害もった人に対しても関心をもつきっかけになるんじゃないかな。40代
自立生活センターの方々の熱い思いや考えがより激しく伝わってきて運動の大切さがひしひしと伝わりました。20代
センターの皆さんの元気で明るい姿に勇気づけられると共にまだまだ不本意な暮らしをしている障害者の人たちがもっと自立生活を普通にできる社会にしていかないとなと思いました。30代
あの「見守り隊」の活動は、ドキッとしました。“高齢者”のやることと思っていましたが、街に出、子どもたちとつながる見守られた子どもたちが意識はしてなくても大人になってあっそう言えば子どもの頃にーーと思い出すだけでもたいしたものだと思います。「障害者」
が目立つことで、世のなかを変えている。一人でデモ行進していると思います。高齢者の方々と見守り隊をやることはすごいなぁと思いました。50代
ヘルパーの方と当事者の方の本音の部分や、この映画を見て、接し方なども学ばせていただきました。これから先、自分の子どもたちにもつないでいきたいです!!本当にありがとうございました。40代
いっぱいいっぱい登場する、「小さなひとこと」。すごい大きな意味がある。どんどん広がってほしい。70代
ひとりひとりの人生にヘルパーが寄り添っているのがいいなあ。当事者さんもヘルパーさんもみんな若いんだなと思った。山下さんのところでは、恋愛なども当たり前のことなんだなと実感した。50代
多くの人に知ってもらいたいと思えた。正直なところ最初はどのシーンで笑っていいのかそれすら迷うほどだったけど、見る中でこの1時間半でも自分が少しずつ変わっていく気がした。自分に何ができるか考えたい。40代
8.まとめ
●なぜ、いま、映画「インディペンデントリビング」なのか。
映画「インディペンデントリビング」は、97分間にわたるドキュメンタリー映画です。約3年という長い期間をかけて、ドキュメンタリー映画づくりには大きな実績のぶんぶんフィルムズで製作を行い、2019年3月に完成の日を迎えました。
この映画を監督した田中悠輝氏もまた、自立生活センターで介助者として障害当事者とリアルにかかわってきた青年です。
そういう意味で、被写体となった障害当事者たちと物理的にも心理的にもじつに近い位置に立ち、声をあげにくいが必ず存在する声をも聴きとって、代弁するような映像を撮ることができたのかもしれません。
メディアに取り上げられる障害者像には、一般の方々へのエンターテイメントになるように安易な感動の物語が添えられていたり、お涙頂戴となるような脚色がつけられていたりします。そのような色付けの一切ない、当事者自身が「これを伝えてほしい」と思える真実の映画になったことと思います。
自立生活センターで働く誰もが、この映画を、国内外のひとりでも多くの一般の方に見ていただきたいという思いがあり、自立生活センターが開催の主体となって上映イベントに取り組みたいという総意のもと、助成金を申請するという運びとなったのです。
●共通の課題と、それぞれの地域やセンターでの個別的な課題
自立生活センターとしての大きな課題はやはり、ひとりでも多くの自立障害者を地域に生み出すにあたって、その人を支える支援者や介助者がつねに必要となるという意味でも、地域の方々への理解を促すことが必要となります。
そういう意味でも、この映画を見ていただいて、一般の方々に深い理解を促すことが一番効果的な手段であったと思われます。
一方で、自立生活運動を進めていく上での地域それぞれ、センターそれぞれに微妙に異なる課題があったりします。この助成を受けての事業として非常にありがたかったのは、それぞれの現地窓口となるセンターにおいて、それぞれに固有の課題を解決するための自由度があったことです。そのときどきに旬な課題に、臨機応変に取り組むことができたことは、「自立生活運動」をよりよく、効果的に進めるために最適だったといえます。
1回のイベントが、その地域にどれほどの影響力をもったかについては、アンケート等からうかがえる声からすると、非常に大きいものだったと自負しております。
一方でこの日本は、2016年7月相模原事件を生み出した社会構造をもち、まだまだ差別偏見は根深く存在し、差別事例報告も後を絶たない現状を抱える国でもあります。それゆえ、私たちの活動に対してはさまざまな見方もあることと思いますが、「バリアフリー上映イベント」という未来に向けて確かな一歩を踏み出したことを私たちは評価し、さらなる前進をしてまいります。これが必ず、来たるべき共生社会への布石となることでしょう。
●今後の方向性
新型コロナウイルス感染予防対策のために残念ながら中止としましたが、3月7日には上映イベントを行おうと思っていました。そこでは、まず映画の上映を行い、参加者間で率直な感想を共有し、夢宙センターに対して好印象を持っていただけたとすれば、私たちの活動を応援する「ファン」と位置づけ、さらに障害当事者との交流を深める機会として「ファンミーティング」を行うような熱い構想をもって企画していました。
「一度、映画を見て終わり」「自立生活運動について多少知識を増やして終わり」ではない、長期にわたる支援や協力の相互的な関係性をずっと続けていきたく思っているからこその取り組みです。
2019年度にはやむを得ぬ事情でできなかった取り組みですが、私たちがたどりついた今後の取り組みの方向性としてさらに温めていきたいと思っています。
9.付録 上映イベント・グラフィティ
2019年度の「インディペンデント リビング」上映イベントは、
現地窓口CILの皆様、地域のご協力者の皆様のおかげさまで開催することができました。
この報告書を持ちまして、心よりの御礼とさせていただきます。
ありがとうございました。